―リュウ・ハヤブサ 龍の忍者―
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夕闇訪れる中、細い裏通りを歩くリュウは突如背後に殺気を感じた。素早く振り返り、彼は迫り来る敵の体を投げ飛ばした― が、感触はあったのものそこに人の姿はなかった。辺りを見回すと数歩先に一枚の紙が落ちている。拾い上げたリュウの目に血文字の一文が飛び込んできた。
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「いらっしゃいませ。あっ、おかえりなさい」
扉を開き店に入って来るリュウに気付くと、アイリーンは彼の元に走り寄った。
「ねえ、どうしたの。顔色がよくないわよ」
リュウは質問には答えず、ぐったりと椅子に腰を落とした。
アイリーンが入り口のカーテンを閉めると、ニューヨークの町の喧騒から少しだけ解放された。
店内には売り物の日本刀や鎧が所狭しと並べられている。古来より続く忍びの家系・ハヤブサの名を持つリュウは、その剣を置き恋人との暮らしを選んだ。ようやく訪れた休息の日々に彼は身をゆだねていた。
幼少の頃よりのライバル、親友である疾風(はやて)
が何者かに襲撃されてから一年が過ぎていた。その妹のかすみがD・O・Aに向かっていることをリュウは知った。彼らを狙う何らかの邪悪な意思が大会の奥底に見え隠れするのにリュウは気付いていた。彼は平穏な生活を捨て、争いに巻き込まれるのを嫌った。しかし、血文字の招待状はリュウを再び闇の中にいざなうのだった―。
「アイリーン・・・」
「わかってるわ」
アイリーンはリュウの口にそっと手をおしあてた。その瞳から哀しみの色はもう消えていた。
「リュウがそういう目をしている時って、行くべきかどうか悩んでる時なんだよね。いってらっしゃい。わたし、ちゃんと留守番してるから」
微笑みながらそう言ったアイリーンにリュウは一度だけ深くうなずき、そしてゆっくりと立ち上がる。
リュウは部屋の奥に向かうと、隠しておいた龍剣を取り出し鞘から抜いた。柄を強く握り締めると、刃は一瞬だけ鋭い光を放った。